業務負担を軽減し住民サービスの向上を目指す MinoRobo導入により11業務で 1547時間の作業時間を削減

業種 :自治体
対象業務 :税務

導入背景

全産業のうち製造業の占める割合が多いことから、“ものづくりのまち”として知られる墨田区。同区は、日常生活関連用品および技術の供給地として、東京都における多種多様な需要を満たしている。また、2012年5月の東京スカイツリー開業以降は、観光地としての人気も高まっている。現在の人口は約28万人、国全体で少子高齢化が進む中、人口が増え続けている数少ない自治体だ。

墨田区役所の区民部 税務課 課税係は、特別区民税・都民税といった個人住民税に分類される税金の課税に関する業務を担当している。しかし近年の人口増に伴って業務量も増加の一途をたどっており、職員への負担は大きくなるばかりだったという。同部署で主事を務める上野裕基氏は「これまで書類の入力や納税通知書の作成、印刷などは、すべて人海戦術で処理してきました。しかし税制度は毎年のように変更がある上、職員の数も限られており、増え続ける業務を処理していくには限界がありました」と語る。

実際、年度末など業務が集中する繁忙期には、職員の多くが残業を余儀なくされていたという。そこで同区役所はこうした課題を解決すべく、定型業務の一部をシステムで自動的に処理する仕組み=RPAの導入を検討。同区役所に基幹系システムを提供しているジーシーシーへ相談することにした。

選定理由

基幹系システムとの相性が良く、プログラミングの知識がなくとも活用可能

RPAを検討するにあたり、墨田区役所が重視したのが、いかに既存の基幹系システムに手を加えることなく導入できるかであった。というのも、同区役所では業務を基幹系システムで処理しているため、大幅に改修するとなると、カスタマイズが多く発生してしまう。また、税制度の変更などのたびにカスタマイズが必要になることも考えられる。それゆえ、汎用的に利用できるツールである必要があったのだ。

「カスタマイズを行えばかなりのコスト高になってしまいますし、今後の対応にも柔軟性が欠けます。そこで、基幹系システムはそのままに導入が可能な製品がないかジーシーシーに相談したところ、紹介されたのが『MinoRobo』でした」(上野氏)

MinoRobo は、SCSKMinoriソリューションズが提供する国産RPAソリューションだ。ジーシーシーがMinoRoboを提案した最大の理由は、既存の基幹系システムとの相性が良く、改修が最小限で済む点にあった。また、MinoRoboは分かりやすいインターフェースで、大部分をマウスで操作できる。日本語でシナリオを作成でき、プログラミングの経験がなくとも活用可能なのもメリットだ。

なお、ジーシーシーは今回の導入において、シナリオ例の作成や説明会の実施など、さまざまな面から支援を行っている。区民部 税務課 課税係 主事 川股剛也氏は「ジーシーシーがプロトタイプのシナリオを作成、こちらをベースにカスタマイズすることで、業務への適応がスムーズに運びました。これも同社が私たちの業務を深く理解しているからこそ可能な対応だと思います」と評価する。

同部署は、2019年3月にジーシーシーと共同研究の覚書を交わすと ともに、8名から成るプロジェクトチームを発足。住民税に関する業務を対象に、実証実験をスタートさせた。ここで結果が出たことから、2020 年4月、MinoRoboを正式に導入した。

導入効果

11の業務で活用、合計1547時間の作業時間を削減

実証実験では、以下4つの業務においてMinoRoboによる処理を実施している。
・宛名不存在データ削除入力業務
・住民税申告区分コード入力業務
・納税通知書印刷出力業務
・入力指示書印刷出力業務

その結果、宛名不存在データ削除入力業務で90.6%、住民税申告区分 コード入力業務で96.2%、納税通知書印刷出力業務で49.3%、入力指示書 印刷出力業務で26.1%の作業時間が削減。合計で312時間かかっていた 作業が165.5時間に短縮され、146.5時間(46.9%)の削減を実現している。

正式導入後は、対象業務を順次拡大。2022年度は11の業 務でMinoRoboを活用しており、合計1547時間の削減を達成した。中でも特に大きな効果を発揮しているのが、異動届出書等入力業務だ。これは、事業者などから異動届出書が提出された際に徴収方法を変更するための作業で、届出リストに基づいて基幹系システムで検索、徴収方法変更画面で届出書の内容を入力するというもの。

「年間約2万件を処理していますが、多くが年度末に集中するため、その負担軽減は大きな課題になっていました。これがMinoRoboを導入したことで、15,983件の処理で1379時間を削減。作業にかかる時間は40.7%減となりました」(川股氏)

さらに、これまで作業の品質やスピードは職員個人の技量に左右されている面があったが、MinoRobo導入によって平均化かつ高速化された上、進行状況をしっかり管理できるようになり、作業の終了時刻もあらかじめ分かるようになった。区民部 税務課 課税係 主事 筒井春菜氏

また、役所において避けられないのが人事異動だ。区民部 税務課 課 税係 主事 柳澤香代氏は「当区役所でも、3~5年程度の期間で部署を 異動します。こうした異動に伴い、まったく異なる分野の業務に携わるこ ともありまして、RPAを活用することもそのひとつで、これまで触れたこ とのないシステムツールでしたが、MinoRobo は分かりやすい操作感 でプログラミングなど専門的な知識がなくても、容易にシナリオを作成 することができました」と語る。

導入後の取り組み

同部署ではMinoRoboの対象を順次拡大しており、2022年度現在、約20の業務で活用を進めている。また、業務への適応を図っていく中で新たな気付きが生まれ、業務プロセス自体を見直すケースも増えているという。「作業をMinoRoboに代替させることで事務の効率化を図り、電話や窓口での応対業務など人にしかできない業務へ注力することで、さらなる住民サービスの向上に貢献していきたいですね」(上野氏)

さらに、墨田区役所の他部署への横展開も進んでいる。2021年7月には国保年金課で実証実験を開始し、2022年4月に正式導入。また、2022年7月からは子育て政策課で実証実験も開始した。定型業務は多くの部署に存在することから、そういった業務にRPAを導入することで効率化を図るとともに、業務改革を進めるべく全庁的な横展開も検討している。

会社情報

社名 墨田区役所
URL https://www.city.sumida.lg.jp/
所在地 東京都墨田区吾妻橋1-23-20
業種 地方自治体
事業概要 1947年、北部地域の向島区と南部地域の本所区が一つになって誕生。
区名の由来は隅田川堤の通称”墨堤”の「墨」と隅田川の「田」から。
面積は13.77平方キロメートル、約28万人。戦後、中小企業のまちとして発展。
東京スカイツリー、両国国技館などを擁し、観光地としても注目されている。
2021年度に「SDGs未来都市」及び「自治体SDGsモデル事業」に選定された。

『MinoRobo(ミノロボ)』について、概要や主な機能、用途別のご利用方法をご紹介します。

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